8月7日は何の日?

『8月7日は、花の日』だそうです。今日は、【植物】についてお話したいと思います。

植物は、人間の生活においてなくてはならないものです。食料としての植物、鑑賞のための植物、衣類の中には綿製品など植物から作られたものがたくさんあります。また、建物の多くは木からできています。そして、植物は人間などの動物よりも圧倒的に多くの化学物質を作り、これは人間にとって薬や健康機能成分などの恵みとなっていることをご存知ですか? この化学物質を作ることは、植物の生存戦略の進化から生まれました。植物は、土に根を生やして動かないという動物とは異なる生き方を選択し、人間よりも千~2千倍も長い生命の歴史があります。動かないで生命が存続するために彼らは、3つの戦略を発達させました。

まず第1に、植物は太陽から光のエネルギーを使い、空気中の二酸化炭素と土からの無機物によって有機化合物(糖、脂質、アミノ酸などの一次代謝産物)を自ら生産する光合成機能を備えました。私たち動物は動けるため、捕獲や採取によってこれらの有機化合物を食料として取ることができるが植物は食虫植物などのごく一部を除いて、光合成経路によって必要な有機化合物を自ら生産します。

第2に、動けない植物は外敵や環境ストレスなどから身を守るために化学構造が複雑で多様な成分を作る化学構造が複雑で多様な成分を作る化学防御機能を発達させました。これらの成分は、外敵などの他の生物に対して強い毒となり植物自信の身を守ります。動くことのできない植物は、いわば化学兵器によって対抗しています。

第3に、植物は生殖のために花粉を運ばなければならないが、風に乗せて運ぶやり方は効率が悪い。効率よく受粉するためには昆虫に運んでもらうという方法があります。彼らは、そのため植物の花の色や香りのついた化学成分を作り昆虫を引き寄せて受粉を助けてもらいます。植物は、我々がパーティーなどで着飾ったり、香水をつけたりして出かけるように昆虫を引きつけるためそれらを用意し待ちます。

この第2と第3の戦略に関わる成分は二次代謝産物であり、それらには化学構造の多様性と特異的な生物活性を有しているという特徴があります。これが薬の開発に最も必要なものです。動かない植物が自らの生き残りをかけ、作りだされた多様な二次産物こそが薬や健康機能成分の源泉になりうるのです。

一例を挙げると、現在臨床的に用いられている植物に由来する抗がん剤は4種類ありがん細胞の分裂を阻害するとわかっています。しかしこの細胞分裂の阻害はがん細胞に限ったことではなく通常の細胞分裂も阻害します。これは、もともと植物が外敵から防御のために作った細胞分裂を阻害する毒成分であるためです。

このように動かないという選択をした植物は、自らを守り生存していくための戦略を駆使しています。そして我々は、時にその力を借りて生きています。

植物の魅力は、その場で強く生き抜く力からきているのかもしれません。

 参考文献 斎藤和季 「植物はなぜ薬をつくるのか」文藝春秋2017